ラグランジアンとハミルトニアンは、同じものを表から見るか裏から見るか、という表裏一体の関係と言えます。

ラグランジアンもハミルトニアンも、粒子の運動を司る運動方程式の元になるものです。18世紀、ニュートンの運動方程式を元に、より一般的に、複雑なものも表せるよう考え出されました。ラグランジアンとハミルトニアンから生み出される式は見かけ上異なりますが、数学的に同値です。

素粒子物理学におけるラグランジアン

この世界にどのような素粒子があり、それらがどのように相互作用するかは以下のようなラグランジアンで表せます。

今のような形にラグランジアンが書かれたのは1960~80年ごろ、このなかに出てくる全ての粒子が発見されたのは2012年です。この一つの式に世界の法則が詰まっています。

ところで、素粒子物理学者はこのラグランジアンをもっと短くしようとしています。「式を短くする」とは、時間も、空間も、力も、物質も、ひとつのものとして同じ式で説明できるようにするということです。何も、宇宙の法則がもっとシンプルに表せるという確証はありません。しかし、素粒子物理学者たちの多くは、世界はよりシンプルに表せると信じています。それは過去の偉業から推察されるからです。

例えば、ニュートンの運動方程式では、天体の運動を司る天上の法則と、りんごが落ちるような地上の法則を結び付けて統合しました。また、電気の力と磁石の力は以前は別々のものと思われていましたが、現在では「電磁気力」として統一的な法則で説明できます。さらに、アインシュタインの一般相対論では、重力を重力を時空の変形とみなすことで、時空と重力を幾何学的に統一しました。

このように、これまで別物と思われていたものが、同じものの別の側面として捉えることができると、物事を統一的にシンプルに、より深く理解できます。これができたら、世界がより美しく見えると思いませんか?