直線と曲線と破線。たったそれだけで、素粒子の反応が表せるのです。

その図は「ファインマンダイアグラム」と呼ばれます。1900年代を生きたファインマンの画期的な発明です。ファインマンダイアグラムでは、素粒子の種類の違いを線の種類の違いで表しています。また、左から右の方向が時間の流れを表します。

ファインマンダイアグラムのすごいところは、この図が正確に数式と対応づけられているということです。反応がどのくらいの確率で起こるか、などが、ファインマンダイアグラムから数式をたて、計算することができるのです。

例えば、次のようなファインマンダイアグラムは、電子と陽電子が衝突し、一度(仮想)Z粒子になり(エネルギーの塊みたいなものと思ってください)、Z粒子とヒッグス粒子になる、という反応を表しています。

私たちは何かを説明するときによく図示をします。例えば、物理の授業で、目に見えない力を矢印で表したことはないでしょうか?それは考えを伝えやすく、議論しやすくするためです。見えない素粒子を議論するために、数式以外の「図」を作り出したことは、素粒子物理学の発展に大きく貢献したと言えるでしょう。